jazz & chocolat

毎年2月になると、無性に聞きたくなる曲がある。

チェット・ベイカーの♪But not  for me。

声がチョコレートっぽいせい。だと勝手に思っている。甘い。そして、なめらか。

2月になり、街が「チョコレートまつり」の風情になると、どうにも聴きたくなって、プレイリストからこの曲を引っ張り出す。

トランペット奏者として知られた彼に、♪Chet Baker Singsというアルバムがあるのは、この声質のせいではなかろうか。どこか力の抜けた歌い方も洒脱でいい。

一番最初にこの曲を聴いたとき、歌詞は切ないのにこの曲想の明るさはどうだ、と思ったのだが、それも含めてちょっとほろ苦く甘いチョコレートにはぴったりなのじゃないかと今は思う。チョコレートの苦みや甘みも、恋のそれも、のどもとを通り過ぎてみれば記憶の上澄みばかりが鮮やかに残るものなのかもしれない。

そして、条件反射だと決めつけているのだが、この曲を聴くと、必ずと言っていいほど、チョコレートが食べたくなる。


>>>Chet Baker  ♪But not for me (youtube)

この曲はなんとジョージ・ガーシュウィンの作曲!ミュージカルのための1曲だったそう。ガーシュウィンといえば♪Rhapsody in blueが有名だけれども、私は♪Let's call the whole thing offも大好きで。

この曲(♪But not for me)もそうだったのかと、なんだか「好きなものがつながる」感じで嬉しくなってしまった。

ちなみに、♪Let's call the whole thing offは、同じくyoutubeで、ミュージカル映画俳優の神様フレッド・アステアと、ジンジャー・ロジャースの映画の中の一幕を発見。せっかくなのでご紹介しておこう。(ミュージカル映画はこの後の世代、ジーン・ケリー率いる「雨に唄えば」etcが好みのど真ん中なのだけど、アステアの紳士ぶりはとても素敵)


>>>Fred Astaire and Ginger Rogers  ♪Let's call the whole thing off (youtube)

チョコレートまつりが一段落して、3月の空気に水ぬるむようになる頃、ベイカーの声が聴きたい熱も徐々にゆるんでいく。

あたらしい季節が来る、と予感するのは、ふと、ベイカーの声を聴かなくなったと気づく頃。道端に緑がいきいきと芽吹き始める季節。その頃にはもしかしたら、あたらしい出会いだって芽吹くのかもしれない。

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