ポータブル御簾がほしい

好きすぎて語れないほど好きな作家さんたちがいる。

どうしてこんなにも素敵な物語を描けるのだろう、素敵な言葉が紡げるのだろうと、ほんとうに嬉しくなってしまう。このひとたちの物語が読めるなんて、私はなんてしあわせな時代に生まれついた人間だろうと思う。

友達に話す分には、タイムセールの客呼びのごとく愛を声高に語っているらしいのだが(つまり熱量はあっても語彙は少ない)、順序だてて整理して話そうとすると、愛がぶわっと一気に溢れすぎて、脳内で交通渋滞を起こし、語れない。頭の中身が整理整頓出来ない。(その話に限らずいつも、と言われればそういう気もする)


だから、私が困る質問のひとつは「好きな作家は?」という質問だ。

強いて言えば、うちの本棚にあるのはみんな「好きな作家」さんの本だ。好きだし、ふつうに話せる作家さんもたくさんいらっしゃる。素敵なものや好きなものは多ければ多いほどいいというのが私の信条なので、あれもいいこれもいいにはなるのだけど、心酔、と言えるほど骨の髄まで好きな作家さんは、こと存命の方となるとそう多くはない。

話が逸れるが、以前書いたように私の本棚は基本、胃袋でセレクトされているため、おいしそうな本が並んでいるのだけれども、「好きすぎて語れない作家さんたち」のものに関しては、その限りではない。勉強不足でお恥ずかしい限りだが、全作読み切ったと言い切れる作家さんはたぶん一人もおらず(ごめんなさい…)、狭い視野なりに、好きだなあと思う作家さんのご著書を読ませていただき、お勉強させていただいている。


話を本題に戻そう。

昔のひとは、えらい人を直視できないからと、御簾を活用していたが、わかる。とてもわかる。切実に。

もともと、神様は直視すると神々しさで目がつぶれるといって、その流れでああいったものができていったのだろうけど、私にとって「好きすぎて語れない作家さん」は神様に等しい。だからどんなに好きな作家さんでも、神々しすぎるのでサイン会に行けない。サインは欲しい。だけど。神様の新刊を胸に抱きしめて、ちょっと歯ぎしりしたりする。


誰か、個人用の、ポータブル御簾を開発してくれたりしないだろうか。

結構需要はあるのではなかろうか。私のように、神々しくて直視が憚られる崇拝対象をお持ちの人以外にも。

たとえば上司にこっぴどく叱られそうなときに御簾を下げておいて反省したふりをしながら実はミルキーをなめている、なんていうこともできると思うし、授業中に御簾を下げ先生を崇め奉るていで堂々と昼寝できたりもすると思うのだが。

帽子型なんてどうだろう。

なんなら、巻き寿司用の巻き簀で代用できたりしないだろうか。野球帽に巻き簀で。子ども用工作番組のスターあたり(のっぽさんやわくわくさん、いまなら、ノージー?)の手を借りたら、なんとかしてくれそうな気もする。

つくってくれないかなあ。

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