きぶん。

春先だったろうか、オードリー・ヘプバーンの写真展を観た。

可憐で凛とした容姿だけではない、彼女生来の、人としてのチャーミングさみたいなものに焦点を当てた写真展がとても素敵だった。

そのことをふと思い出した。

そういえば、あのとき買ったはがきがあったな、と探してみると、二枚のポストカードが見つかった。

映画「ティファニーで朝食を」の1シーンと、撮影現場でのオフショットだった。

膨大なポストカードの中から、悩みに悩んで、かわいいと選び出してきた二枚だったのを覚えている。

今気づいたのだけど、どちらのオードリーも手に食べ物を持っていた(片方はひとくちを食べているところ!)。

どんなところにあっても、どんな状況下にあっても、私はそうとうの食いしん坊で、このうつくしい人の膨大なポストカードの中からわざわざこの食べ物のシーンを選び出すか、と、自分の業のようなものをまざまざと見せつけられた思いがした。

秋だ。

おいしいものが出てくる季節だ。

昔は、花で季節をかぞえるような、うるわしい人になりたいと思ったものだ。

もう、あきらめて、おいしい食べ物で季節をかぞえている。

にんげん、素がいちばん、ということにしておこう。

決して怠慢なのではなく。

はなうたとくちぶえ

冬森灯

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