希望をうつす写真家

その写真家に興味を持ったのは、まだ制服を着ていた頃だった。
学校帰り、地下鉄の駅でみかけたチラシに目が止まり、たまらなくなって、寄り道した。写真数点とタイトルだけのモノクロームのチラシを握りしめたまま、会場に入った。

数人の写真家の作品が展示されていたのだと思う。うろおぼえだが、ライフ誌所属の写真家の展覧会かなにか。ロバート・キャパやアンリ・カルティエ・ブレッソンの名前と作品もそこで初めて知った。
好きだなぁ、と思う作品には、同じ名前が表示されていて、写真家という職業とその感性のあらわれかたを体験した気がした。
ポーズをとるわけじゃなく、盗み撮りみたいに、日常の中のふとした人々の姿を切り取る作品は素敵だった。

目で見たものを写しているだけ。
なのに、それが、たまらなくいとしい。
その人の目には世界がこんな風に見えているのか、と思うと、胸がじんわりぬくもった。

ロベール・ドアノー。
エリオット・アーウィット。

その二人の名前は、私のなかに特別なものとして刻まれた。彼らは写真の中に希望とほんのりユーモアを切り取る。

いまでもその時に買った図録が本棚に収まっている。おこづかいがすべて飛んでしまって、友達の誘いも欲しい本もおやつもすべて我慢したけど、心はほくほくゆたかだった思い出と一緒に。

そのドアノーの写真展が、横浜、そごう美術館で開催されている。会期はあと一ヶ月くらい。いくつかのセクションにわかれて展示されている中の「子どもたち」「芸術家」がとても素敵だった。
そして、現在アトリエを運営している彼の娘たちが、とてもチャーミング。

何必館コレクション ロベール・ドアノー展/そごう美術館

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