ちゃぶ台がえし
相棒が時々、ちゃぶ台返しをする。
彼は食事が気に入らず、よほど腹に据えかねると、やる。年に一、二度やる。
トイ、というには憚られる巨漢のトイプードル(ほぼ中型犬サイズ)の彼ももう5才になり、だいぶ落ち着いて暮らしているはずなのだが、久々にちゃぶ台返しされた。
理由は明々白々。
低脂肪タイプのごはんにしたのが、お気に召さなかったらしい。最初の二日くらいは食べていたくせに、三日目にやられた。
彼のごはんスペースは自宅の2階、階段を上ってすぐのところにあるのだが、手でチョイチョイ、あるいは鼻先で押して、ごはん皿ごと階段に突き落とす。
鼻をフンフン鳴らして、いかにも「やってやったぜ」といった風情。
そんなことをしても、別なものが与えられるわけではないとわかっているだろうに。それでも、やってやらぬと気がすまぬ、という感じで、挑戦的に鼻を鳴らす。
このごはんは気がすすまぬ、という時は、ハンガーストライキして根比べになるのだが、低脂肪はよほど腹に据えかねたらしい。
再びごはん皿に同じごはんが盛られると(だってそれしか買ってないのだもの)、文句を喉の奥に転がしながら、彼は悔しそうにして、ふて寝を決め込んだ。ハンガーストライキに移行するらしい。
犬と飼い主は似るというが、どうやら食いしん坊精神だけが、似ているらしい。
私はちゃぶ台返しはやらないが。それをやれる度胸は、彼に学ぶべきところかもしれない。
矮小な笑顔など浮かべておべんちゃらを言うでなく、ちゃぶ台を返すほどに、食べることに真摯になれたら、あるいは筆も冴えるのか。
そんなことを思いながら、いただきものの冷凍萩の月にかじりつく朝。萩の月は冷凍するとクリームがもっちりしておいしい。
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