いのり。

好きな音楽を聴きにいく道のりは

電車の外にうつる町並みさえ

いのりに満ちあふれている。

満月。

新嘗祭。

その日に

奇跡みたいな時間と縁がうまれたこと。

感謝。

―――――――――

追記。

無意識にしみわたるような充ち満ちたこれは、しあわせと呼ぶのだろうか。

演奏が終わり、最後の音の響きが消えたあと、急に我に返った気持ちがした。

長いようで短く、短いようで長く。

からだの隅々に音がしみこむうちに終わっていた。

考える間はなかった。

あの、たゆたうような、いろんな音が声が響き色が弾け風景がうつろっていたあの空間をなんと呼べばよいのか。

生命を肯定されるような。

細胞のように小さなものが宇宙のように大きなものを凌駕するような。

生きている今ここを祝福されるような。

終演後、ご本人に一瞬お会いできて、言えたはずなのに、言葉にして発することはできなかった。

会場を出たら花火の音が大きく響いた。

建物に隠れて見えない花火に、何人かが立ち止まって耳を澄まし、濃藍色の空を見つめる。

ことほぎ、うちならされる、太鼓の音のようだ。

まつりのようだ。

いのちをことほぐ、まつりの。

新嘗祭。

満月。

花火よりもくっきりと、空にまるい月の輝く。


>>>高木正勝さん

はなうたとくちぶえ

冬森灯

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