食いしん坊は便利
急に熱を出して、寝込んでしまった。
食いしん坊とは便利なもので、その日、あれ?と異常に気づいたのは、うどん一杯が食べきれなかったこと。
遅めの昼ごはんどき、揚げたてのゲソ天入りのもちもち讃岐うどんを半分ほど食べたところで、急にスイッチをぱちんと切ったみたいに、食べられなくなった。
この食いしん坊の私が一杯を食べきれないなんておかしいぞ、と思っていたら、夜になるとふらふらしてきて、計ってみると高熱といっていい数字が表示されていた。
何度計り直しても同じで、病らしいと認めざるを得なくなった。
いろいろ立て込んでるのに、こんな時期に、と泣きそうになったけれども、熱で朦朧としていてはやれることも少ないので、気持ちを切り替えて、寝ると食べるに集中し、徹底的に療養することにした。ここで無理にでも休んで早くに回復した方が能率はよいはず。
家族になにか食べたいものと聞かれて、口をついて出たのが、蒸しパンだった。
スーパーやコンビニにある、袋入りの黄色い蒸しパン。小さいのや大きいの、家族はいろんな種類を買ってきてくれていた。
ひとかけ口にいれてみたら、そのやさしい口当たりと甘さが、からだにしみわたって、信じられないほどおいしかった。体がエネルギーとして甘いものを欲してでもいるのか、普段の数倍はおいしい。
こんなにおいしい蒸しパン、食べたことがない。
よく食べてる、全く同じパンなのに。
熱はしんどいけれども、こんなにおいしく感じられるなんて、悪いことばっかりでもないなあ、と思えるのだから、やっぱり食いしん坊は便利です。
(※写真をとるまでもなく食べてしまったので、黄色い蒸しパンはご想像にまかせます)
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